外伝６巻　ヴァラキアの少年

VENTURER OF VALACHIA


第一話　ヨナ
第二話　男盗女娼
第三話　黒のブルカス
第四話　いつか遠い海へ

あらすじ

　ヴァラキアの少年イシュトヴァーンは、ひょんなことから天才少年ヨナを助ける。ヨナはばくちのかたにとられた姉を救うためにイシュトヴァーンからばくちを習い、その代わりにイシュトヴァーンに読み書きを教える。そのヨナにヴァラキアの貴族の魔の手が伸びる。未来のゴーラ王イシュトヴァーンとパロ参謀ヨナ・ハンゼの出会いと別れを描く、　「幽霊船」の直前の物語。

登場人物

人名 備考
アリサ みんな十六歳だったのです　　≪イシュトヴァーン王のサーガより、アリサの嘆きの歌≫
ﾛｰﾀｽ･ﾄﾚｳﾞｧｰﾝ ヴァラキアをおさめるヴァラキア公　若く英明果断の名声を誇る
イシュトヴァーン ヴァラキアの少年　十六歳　下ヴァラキア、ヴェントの生まれ　のちにゴーラ王となる≪紅の傭兵≫　
ブーン 下ヴァラキアのならずもの　「おお≪赤猫≫ブーンじゃねえかい」
テヴェール オルシウス号の船長　「あいつは、オルニウスじゃないぜ、じゃテヴェールの、オルシウスかな。」
パオラ 「カメロン船長とパオラ嬢によろしくな、イシュト。せいぜいうまくやんなよ」
マオ婆 チチアの食い物屋　「──もうそろそろ、マオ婆の店があくかな。」
ツェペシュ 【第一、このへんは、チチアの顔役『片目』のツェペシュの縄張だ。】
ガウドじじい チチアの人買い　「早速、ガウドじじいのところに売りとばすんだ。」
ガロス のっぽのガロス　チチアのばくち打ち　イシュトに五百五十ランの借りがある
ドン チチアのならずもの　海坊主のような大男　「おい、ドン、やめろ。」
イシュトヴァーン 「ヴァラキアの統治時代の英雄王イシュトヴァーンから、とったんですか？」
「おれにイシュトヴァーンという、古代の王の名をつけてくれたんだ。」
ハンゼ 下ヴァラキアのはずれカルアの石屋　ヨナの父　「ぼくは、ヨナ─ハンゼの息子のヨナといいます」
ヨナ カルアのヨナ　十二歳の天才少年　イシュトに読みかきを教えてくれた
ブルカス 腕の立つばくちうち　「≪黒のブルカス≫かよ！」「あいつにひっかかったのか！」
オー・タン・フェイ パロの私塾の塾頭　「オー・タン・フェイの塾へでも入学して、学問をやるのが夢なんです。」
ルキア ヨナの姉　十七歳　ひるは洗濯女、夜は縫い子をしていた　ばくちのかたにとられた
フェイ イシュトをとりあげた魔女　イシュトが王になることを予言した
ヨーム イシュトの子分　背はたかいがすこしのろまででぶ　力がつよい
モイラ イシュトに惚れている娼妓　恐しく胸の大きい二十五、六の赤毛の女
ピット 賭場の主　【太って陽気なはげあたまのピットおやじの背中を叩いた。】
ゴール 賭場の主　「ピットの賭場にも、ゴールとっつぁんとこにも、出てねえっていうし」
キバ チチアの貸し部屋業の遣手婆あ　「けっこうキバの婆のとこで遊び女でとおってる。」
クナイ 「下ヴァラキア市に、クナイって、でかい糸屋があるの知ってるかい。」
ヴァイア 下ヴァラキアのでかい糸屋の上の娘　賭場でイシュトを見そめてぜひ会いたいといっている
タム　 イシュトの仲間　「──いつものとおり、あとはタムにでもまかせるよ」
ロイ　　 娼家のおやじ　「ロイおやじんとこへつかいをおやりよ。」
デール　 イシュトの知り合い　戦場稼ぎに西へ行っている
カーン イシュトの知り合い　「カーンはちとくらいこんでるよ」
サム 海坊主のサム　サイスのとこの用心棒　頭をくるくるにそりあげた人相の悪い大男
サイス 因業そうにやせこけた、はげ頭の老人　賭場の主　ハンゼをいかさまばくちにひっぱりこんだ
ブルカス 黒のブルカス　サイスの賭場のコロふり　大柄な、にくにくしい、色のまっくろなかなりの年配の男
リー　　 ≪ウミネコ亭≫のばばあ　「おい、リーばばあ、こいつをとっとけよ」
カンドス ロータス・トレヴァンのお気に入り　港湾管理大臣　お忍びでチチアのウミネコ通りをうろついている
太っちょオリー ロータス・トレヴァンの弟　ドライドン亭の男娼めあてにチチアに通っている
イリシア ヨナの母　トレヴァン一族にも血のつながりがある家柄の姫　上ヴァラキアでも名高い美人
ヨピス ピットの賭場のコロふり　やせた色の黒いばくち打ち　コロふりの腕は一流
ルハス　　 ピットの賭場のコロふり　「ヨピスかルハスがいたら、あとでちっと用があるって…」
ガナ チチアの娼婦　イシュトの知り合い　「おッ、ガナ、今夜はあぶれかよ」
ムース　　 ピットの賭場のコロふり　「あと一ザンでムースにかわるが。ふってくれるか、イシュト」
トド 『女神亭』のやり手婆　ブルカスの女房　「女房のトドってのが、そこのやり手婆なのよ。」
サム ブルカスの用心棒　「海坊主のサムってのが、右腕よ。あと、船玉のジャンってのができる。」
ジャン
エンナ 東チチアの『女神亭』の妓　「エンナが、わからんことをいってすまんわえ。」
ミーナ　 東チチアの『女神亭』の妓　「ミーナと、イラと、アイダと、モアラを呼んどいで」
イラ
アイダ
モアラ 東チチアの『女神亭』の妓　ほっそりした、目もとのあどけない妓
アンダヌス 【ライゴールの≪蛙神≫アンダヌス評議長もかくやという、巨大な生ける肉塊であった。】
ファーミア 『女神亭』のいちばんいい女　「いいともな。ファーミアと、イランでよかろ。」
イラン 『女神亭』のいちばんいい男　「いいともな。ファーミアと、イランでよかろ。」
コルド 伝説のばくち打ち　イシュトの師匠で育ての親　十二の必勝法と十のいかさま秘術をあみだした
ジャン サイスの賭場の胴師　やせて小さい、目つきのするどい男　「良いではないか、ジャン。」
銀狐 「片目のコルドが、銀狐の賭場を、つぶしたときみたいだ……」
ドビス ≪五つ目≫　コルドに負けた顔役　「コルドがドビスに勝って、よく朝どうなってたかをな。」
オリー・
トレヴァーン		 ヴァラキアの公弟　下ヴァラキア総督として、下ヴァラキアを治めている
カメロン オルニウス号の船長　ロータス公の信頼が絶大で、親友として扱われている
　この半年、ずっと外洋まわりで戻ってない　
ミロク ミロク教の唯一絶対の主　何回となく、輪廻転生して地上にあらわれている
リヤ 人品いやしからぬ、五十すぎの、温厚そうなパロ貴族　「私が、パロ正使、宰相リヤ侯爵だが」　
ヴァレリウス リア大臣が養育している貧しいがたいへん頭のよいパロの少年