21巻 黒曜宮の陰謀

ODIUM OBSIDIANUM


第一話 暗流
第二話 ヤーンの手
第三話 ヤヌスの時
第四話 仮面の恋

『サリアの娘』へ あらすじ 『運命の一日』へ

 ケイロニアの大典まであと2日、アキレウス大帝病床にあり、の報は黒曜宮で陰謀を巡らす人々の動揺を誘う。イリスはダリウス大公の侍女に変装し、アキレウスの寝所に忍び込む。アキレウスの顔を見て動揺したイリスはアキレウスに襲いかかろうとするが、寝所を警備していたグインに止められる。女官姿のイリスは七曜宮の奥庭から出たところで、アキレウス毒殺の陰謀を耳にし、それをグインに伝える。その代わりにグインがイリスに渡したのはアキレウスとイリスの母ユリアとが交わした誓文であった。
 大典の前日、マライア皇后は秘密裏に宮廷医カストールに呼び出され、そこでアキレウス皇帝死去を告げられる。マライア皇后、ダリウス大公、アンティーヌ侯アウルス、アトキア侯ギラン、護民長官デウス伯らはアキレウス大帝亡き後のケイロニアについて秘密会議を開く。皇帝代理の座を争い、マライア皇后とダリウス大公は激しく対立する。ダリウス大公はマライア皇后をランゴバルド侯ハゾスの暗殺首謀者として告発するが、グインに証拠を出すことを拒まれ、窮地に陥る。双方が進退窮まったところで、アンティーヌ侯に促されたグインは、その場に証人として死んだと思われていたハゾスをつれて現れる。ハゾスはグインによってかくまわれていたのだ。ハゾスは自分を殺害しようとしていた犯人としてマライア皇后を糾弾する。追い詰められたマライアはその場から逃れようとするが、そこの現れたのはケイロニア皇帝アキレウスであった。アキレウスは薬によって死を装い、マライアとダリウスの陰謀を明らかにしようとしていたのだった。
 前夜祭の夜、ランゴバルド侯の別邸で一人きりですごすマリウスの元にイリスが現れる。ふたりはケイロニア・ワルツで踊り、お互いの気持ちを確かめ合う。イリスを男だと思っているマリウスにイリスは自分の本当の名を告げようとするが、自分の野望を捨てきることはできなかった。黒曜宮では華やかな前夜祭が行われていた。そこでグインは密かにダルシウスの副将として出兵するように命じられ、千竜長に任ぜられる。


なぜだかあらすじがずいぶん長くなってしまいました。

やっぱり好きな巻はあれもこれも書きたくなって、ついついまとめるのに困ります。それと、時間があるとわりと短めにまとめられるのですが、時間がないと長くなりますね。「今日は時間がないので長い手紙で申し訳ない」と言ったのは誰でしたっけ…。

ということで。とても好きな巻の一つです。
なんといっても秘密会議でのマライアとダリウスのやりとりが面白い!ここは何度読んでも面白いです。マライアの歴史をひもときながらダリウスをおとしめるあたり、双方がアンティーヌ侯やグインを味方につけようと画策し、あがくあたりがいいですね。本格的に登場は初めてのアンティーヌ侯も、「今が時だ、グイン。ヤーンの意志を行え。」の台詞がかっこよくて好きです。「かくてヤーンの光、ドールの闇を照らしたり」これはグインですが、グイン・サーガの魅力の一つに主人公達の台詞のかっこよさがあります。名台詞というのは心に残ります。

最後に出てくるヴァレリウスとリーナス、この後の展開がわかっているとこのころの仲のよい主従がとても哀しい。(2010年2月23日)