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| 第一話 丘の上の風 第二話 闇に蠢くもの 第三話 光と風 第四話 神の手 |
新生モンゴール左府将軍イシュトヴァーンはオーダインでクム軍と対峙していた。進展のないことにいらだつイシュトヴァーンだったが、嵐の夜のクム軍の奇襲により戦端が開かれる。そのころトーラスでは囚われの公子タルーとアリストートスが密かに手を結んでいた。クム軍とモンゴール軍の戦いはイシュトヴァーンの活躍により大勝利に終わる。クムは全面的にモンゴールの申し出を飲み、和平条約が結ばれた。
帰国したイシュトヴァーンにアムネリスは結婚という言葉を口にする。まるで黄金の鎖に絡みつかれたような閉塞感の中で、嵐の中に飛び出したイシュトヴァーンはアムネリスの侍女フロリーから想いを打ち明けられ、フロリーとともに金蠍宮を逃げ出すことを約束する。次の日、逃げ出す手はずを整えるイシュトヴァーンに沿海州からの使者が到着する。それは遙か昔に別れ別れになったヴァラキアの海軍提督カメロンだった。カメロンは探し続けていたイシュトヴァーンについに出会うのであった。
前巻の『愛の嵐』よりも、実際の嵐としてはこちらの『神の手』の方が嵐のシーンが重要です。前巻は「愛」の嵐なのに対して実際の嵐です。イシュトヴァーンは存在そのものが嵐なので嵐が実によく似合います。特にこのあたりのイシュトヴァーンは、自分でもわからない閉塞感に悩まされていますから、それを暗示するしーんとして嵐が必要なのでしょうね。
イシュトヴァーンがフロリーと逃げてしまったとしたら、それはそれで彼は面白く過ごせたのでしょうか？ゴーラの僭王となる予定の彼にとってはそれは許されないことであるが故に、そこに神の手をもってカメロンが使わされたのでしょう。(2010年3月19日)